シュガーはお年頃
あなたが一番好きな漫画家は誰だろうか。そう問われてすぐに答えられるだろうか。僕は答えられる。二宮ひかる、という、特別に有名なわけでも大いに評価されているわけでもない、とある女性漫画家だ。
- 作者: 二宮ひかる
- 出版社/メーカー: 少年画報社
- 発売日: 2008/04/28
- メディア: コミック
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さて、そんな作者は2005年あたりからしばらく漫画が描けない、いわゆる「気絶期間」が続いていたわけだが、いくつかの短編を経てようやく長編が走り始めた。それが「シュガーはお年頃」である。スターダスト☆レビューのデビューシングルと同じタイトルを持つ本作は、リハビリのためか、かつて多かった社会人やOLの話ではなく、(ハネムーンサラダ以降に増えた)学生時代を舞台にした、どこか突き抜けた感のある作風だ(そして毎回、主人公が古い歌を歌うw)。二宮らしいモチーフは頻出しているのだけど、すべて一回転してしまったというか、メタ的というか、かつての「二宮ひかる」的要素を全てネタ化しているような感覚に陥る。それはたぶん、これまで男性主人公が担ってきたポジションを、「娼婦になりたいガサツな少女」が担っている、という捩れに端を発している。ヒロインは二宮作品らしい少女であることが、余計にこの捩れを際立たせている。
ここにはかつて、僕が好きだった二宮はいない。だが、妙な突き抜け感と捩れを持った、随分と不思議な方向を向き始めた二宮がそこにいて、どうやらこれはこれで嫌いではない。幸いにして、2巻以降も続くようだ。この微妙なバランスがどこまで続くのか、期待したい。